「ドローンで森を測る」と一口に言っても、レーザー測量と写真測量では、用途も価格も成果物の意味も違う。巻 02 の最初の一本は、現場で実際に何が「標準」になりつつあるのかを、機材費・運用費・精度の三軸で整理する。
01二つの測量方式、何が違うのか
林業の現場で広く使われているドローン計測は、大きく二つに分かれる。写真測量(SfM, Structure from Motion)は、可視光カメラで多方向から撮影した画像群を、ソフトウェアで三次元復元する方式である。機材は安価で、機体価格はおおむね 30 万円〜200 万円のレンジに収まる。弱点は、樹冠の上面しか写らないことだ。地面の高さ — つまり地形 — を直接測れないため、樹高や林分の構造を厳密に出すには、別途、林床のデータを補う必要がある。
レーザー測量(航空 LiDAR)は、レーザーパルスを照射し、樹冠の隙間を抜けて地面に届いた反射を拾うことで、樹冠面と地面の両方を同時に取得できる。樹高、胸高直径、本数密度といった、林業実務で本当に使いたい数字に直接到達できる。ただし、機材費は跳ね上がる。LiDAR センサーを搭載した産業用ドローンは、機体・センサー・後処理ソフトを合わせて 700 万円〜 2,000 万円規模が一般的だ。
02どちらをいつ使うか — 用途別の使い分け
研究所が国内 20 社の事業者と現場を歩いた感触では、使い分けはおおよそ以下のように落ち着きつつある。
- 施業前の林分調査(材積推定、本数密度の把握)→ LiDAR
- 境界確認、登記資料作成のための地形 → LiDAR
- 施業後の出来高検収、伐採跡地の把握 → 写真測量で十分
- 林道整備・路網計画 → LiDAR(地形が必要なため)
- 被害状況の俯瞰的把握(風倒木、獣害)→ 写真測量で素早く
つまり「測りたいのは樹冠か、地形か」という問いに、機材選択は還元できる。
03自前で持つか、外注するか
機材の値段だけを見ると LiDAR は手が出にくいが、現場では「自前で持たず、外注で年に数回回す」というモデルが急速に広がっている。20ha 規模の林分を LiDAR で外注すると、おおむね 60 万円〜120 万円。これに対し、機材を自前で持つ場合、機材費の他に、年間の保守・更新、ソフトのライセンス、技術者の人件費が乗る。仮に機材を 10 年使うとして、年間の総コストは 200 万〜400 万円規模になる計算だ。
研究所の試算では、年間 50ha 以上を継続的に測るのでなければ、外注の方が経済合理的だ。逆に、森林組合のように地域内で年間数百 ha 規模の対象を抱えているなら、自前化の損益分岐点を越える。
04三年後、どうなるか
機材の値段は、レーザーセンサーの量産化に伴って、引き続き下がる。一方、データの「使い方」の知見は、まだ業界全体で薄い。研究所の編集予測では、向こう三年で勝負を決めるのは「測ること」ではなく「測ったあと、その数字をどう経営や政策に流すか」である。森林クラウドや、自治体 DX 担当者の動きと、ドローン計測は、一つの絵として接続される必要がある。
本記事の費用感は、研究所が 2026 年 4 月時点で 20 社にヒアリングした中央値を用いている。実際の見積もりは現場条件で変動する。