巻 02 · 05データ · Satellite

衛星 × AI で、47 都道府県の林相を可視化してみた

Sentinel-2 衛星画像と林相図を組み合わせ、47 都道府県の針葉樹/広葉樹比率を独自集計。「西高東低」より「県内格差」のほうが大きかった。

著者
農林水産業DX研究所 編集部
公開日
2026.04.15
読了時間
読了 7 分

Sentinel-2 衛星画像と公開林相図を組み合わせ、47 都道府県の針葉樹/広葉樹比率を独自に集計した。結果は、地域差の大きさと、よく言われる「西高東低」の単純な構図が崩れていることだった。

01何を測ったか

EU が運用する Sentinel-2 衛星は、可視光と近赤外を 10m 解像度で、5 日に 1 度撮影してくれる。データは無償公開。これと、林野庁が公開する基準地林相図(県別 vector 形式)を重ね合わせ、研究所が独自に処理した。

処理は次の手順:

  • 各県の森林面積範囲を切り出し(マスク)
  • 2024 年 7 月の Sentinel-2 画像から NDVI(植生指数)と赤エッジバンドを抽出
  • ランダムフォレスト(簡易な機械学習)で、各 10m ピクセルを「針葉樹」「広葉樹」「混交」「裸地・伐採跡」に分類
  • 県別に集計

訓練データには、林野庁公開の標準林相サンプル点 12,000 件を使用。分類精度は cross-validation で約 82%。

02結果ハイライト

針葉樹率(全森林に占める針葉樹の割合)が高い県・低い県を並べると、こうなる。

順位針葉樹率
1 位宮崎県76%
2 位大分県71%
3 位高知県68%
.........
45 位青森県24%
46 位秋田県(広葉樹側)23%
47 位北海道19%

「西高東低」は概ね正しい。ただし、興味深いのは中間県の地形効果だった。

03「県内格差」のほうが大きい

研究所が驚いたのは、県内の地理的バラつきが、県間差を超えていたことだ。

例:長野県は針葉樹率の県平均が 52% だが、南信地方は 68%、北信地方は 41% と、内陸高地と日本海側で構造が違う。同じ「長野の山林」と言っても、購入する物件の場所で林相は劇的に異なる。

04yamabank 物件に重ねるとどう見えるか

研究所が衛星データを yamabank の物件位置に重ねた図(別添)を見ると、いくつか気づくことがある。

  • 北海道・日高地方の物件(hokkaido-041):周辺 5km 平均で広葉樹率 81%。広葉樹資源として希少な水準
  • 宮崎・霧島山麓の物件(miyazaki-005):周辺 5km 平均で針葉樹率 88%。地域全体がスギ・ヒノキ単純林に近い
  • 長野・北アルプス麓(nagano-014):標高で林相が垂直に変わり、急傾斜で 1,000m 以上は広葉樹優占に切り替わる

「物件詳細ページの林相欄」は、現状、地主の自己申告 or 林相図ベースで書かれている。これに衛星由来の周辺林相データを追加すれば、買い手の判断材料が一段増える。

05衛星データの限界

正直に書いておく。

  • 林齢は分からない:50 年生のスギも 80 年生のスギも同じ「針葉樹」として分類される
  • 樹種の細分類は不安定:「スギ」と「ヒノキ」の区別は、可視光だけでは 50% 程度の精度しか出ない
  • 下層植生は見えない:上層樹冠の話に限定される

これらは、ドローン LiDAR や地上計測と組み合わせない限り埋まらない情報の穴である。衛星は「マクロな構造を把握する道具」であって、「ミクロな施業判断の決定打」にはならない。

06三年後に向けて

Sentinel-2 の後継機 Sentinel-NEXT は、2027 年打ち上げ予定で、解像度 5m、再訪 2 日。さらに、日本のだいち 4 号(ALOS-4)は L バンド SAR で森林バイオマスを直接推定できる。

研究所の見立てでは、今後 3 年で、日本全国の森林炭素ストックを 10m 解像度で半年ごとに更新するような国レベルのデータ基盤が、ようやく現実的になる。これは J-クレジットの認証コスト構造を抜本的に書き換える可能性がある(巻 02 · 03 と接続)。

本稿の集計は、研究所が 2026 年 3 月に実施した独自処理結果に基づく。解析コードと再現可能なノートブックは、/dx/data で順次公開予定。

農林水産業DX研究所 編集部
Editorial

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