巻 02 · 03政策 · J-Credit

森林由来 J-クレジットは、本当に「儲かる」のか

山を持っている人が、いまいちばん気になっているのは「カーボンクレジットで稼げるのか」だ。答えは、条件付きで「儲かる」。ただし、想像している桁とは違うかもしれない。

著者
農林水産業DX研究所 編集部
公開日
2026.04.28
読了時間
読了 14 分

20ha の山林を基準ケースに、認証コストから売却までを丸ごと計算した。「儲かる」のは、林分の生産力が高く、クレジット単価が良いケースに限られる。条件が悪ければ赤字になる。

0120ha モデルケース、まず全体像

ここから一切の抽象論を排し、研究所が組み立てた基準ケースを示す。所在は本州中部の人工林(スギ・ヒノキ)、面積 20 ha、平均林齢 50 年生、中傾斜(25〜30 度)、林道整備済み、5 年前に間伐実施を想定。

認証期間は 8 年間。期間中の追加吸収量は年あたり約 4〜6 t-CO₂/ha、8 年間の総追加吸収量はおおよそ 640 〜 960 t-CO₂。所有者がもらうクレジットは、640 〜 960 トン分になる。

02クレジットの売却価格 — ここが意外と知られていない

クレジット種類2025〜26 年の取引価格レンジ
省エネ由来 J-クレジット1,000 〜 3,000 円/t-CO₂
再エネ由来 J-クレジット2,000 〜 4,000 円/t-CO₂
森林由来 J-クレジット6,000 〜 16,000 円/t-CO₂

森林由来は明確に高値で取引されている。理由は、企業が ESG・CSR の文脈で「ストーリー性のあるクレジット」を求めているから。また、入札制で買い手が多く、供給が追いついていない。2025 年度の林野庁入札では、平均落札価格が約 13,400 円/t-CO₂ に達した。控えめに見積もっても 8,000 〜 10,000 円/t-CO₂ で計算するのが現実的である。

03実質利益はどうなるか

ケース売上コスト中央値実質利益(8 年間)
控えめ512 万900 万約 −388 万円(赤字)
中央値800 万900 万約 −100 万円(ほぼトントン)
強気1,248 万900 万約 +348 万円(年あたり約 44 万円)

20 ha 規模での現実は、これだ。「儲かる」のは、林分の生産力が高く、クレジット単価が良いケースに限られる。逆に、条件が悪ければ赤字になるということを、所有者にはまず認識してほしい。

04「儲かる」ための三つの条件

1. 規模をまとめる(50 ha 以上が目安)

20 ha 単独では、固定費に押しつぶされる。50 ha 以上に集約すると、コスト構造が劇的に改善する。森林組合や複数所有者の共同申請、自治体プロジェクトが今後の中心になる。

2. DX を組み込む(モニタリングコストを下げる)

ドローン計測、衛星リモートセンシング、森林クラウドを活用すれば、年次モニタリングのコストは半分以下になる。

3. 販売チャネルを直接持つ

仲介手数料を 15 % 取られると、利益はかなり目減りする。最近は、地域金融機関・大手企業との直接契約スキームも出始めた。これを取りにいけるかが、最後の差を生む。

本稿の価格データは、2026 年 4 月時点の J-クレジット入札結果および研究所が実施した 8 件のヒアリングに基づく。市場価格は変動するため、実際の事業判断は最新の市場データに基づくこと。

農林水産業DX研究所 編集部
Editorial

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