20ha の山林を基準ケースに、認証コストから売却までを丸ごと計算した。「儲かる」のは、林分の生産力が高く、クレジット単価が良いケースに限られる。条件が悪ければ赤字になる。
0120ha モデルケース、まず全体像
ここから一切の抽象論を排し、研究所が組み立てた基準ケースを示す。所在は本州中部の人工林(スギ・ヒノキ)、面積 20 ha、平均林齢 50 年生、中傾斜(25〜30 度)、林道整備済み、5 年前に間伐実施を想定。
認証期間は 8 年間。期間中の追加吸収量は年あたり約 4〜6 t-CO₂/ha、8 年間の総追加吸収量はおおよそ 640 〜 960 t-CO₂。所有者がもらうクレジットは、640 〜 960 トン分になる。
02クレジットの売却価格 — ここが意外と知られていない
| クレジット種類 | 2025〜26 年の取引価格レンジ |
|---|---|
| 省エネ由来 J-クレジット | 1,000 〜 3,000 円/t-CO₂ |
| 再エネ由来 J-クレジット | 2,000 〜 4,000 円/t-CO₂ |
| 森林由来 J-クレジット | 6,000 〜 16,000 円/t-CO₂ |
森林由来は明確に高値で取引されている。理由は、企業が ESG・CSR の文脈で「ストーリー性のあるクレジット」を求めているから。また、入札制で買い手が多く、供給が追いついていない。2025 年度の林野庁入札では、平均落札価格が約 13,400 円/t-CO₂ に達した。控えめに見積もっても 8,000 〜 10,000 円/t-CO₂ で計算するのが現実的である。
03実質利益はどうなるか
| ケース | 売上 | コスト中央値 | 実質利益(8 年間) |
|---|---|---|---|
| 控えめ | 512 万 | 900 万 | 約 −388 万円(赤字) |
| 中央値 | 800 万 | 900 万 | 約 −100 万円(ほぼトントン) |
| 強気 | 1,248 万 | 900 万 | 約 +348 万円(年あたり約 44 万円) |
20 ha 規模での現実は、これだ。「儲かる」のは、林分の生産力が高く、クレジット単価が良いケースに限られる。逆に、条件が悪ければ赤字になるということを、所有者にはまず認識してほしい。
04「儲かる」ための三つの条件
1. 規模をまとめる(50 ha 以上が目安)
20 ha 単独では、固定費に押しつぶされる。50 ha 以上に集約すると、コスト構造が劇的に改善する。森林組合や複数所有者の共同申請、自治体プロジェクトが今後の中心になる。
2. DX を組み込む(モニタリングコストを下げる)
ドローン計測、衛星リモートセンシング、森林クラウドを活用すれば、年次モニタリングのコストは半分以下になる。
3. 販売チャネルを直接持つ
仲介手数料を 15 % 取られると、利益はかなり目減りする。最近は、地域金融機関・大手企業との直接契約スキームも出始めた。これを取りにいけるかが、最後の差を生む。
本稿の価格データは、2026 年 4 月時点の J-クレジット入札結果および研究所が実施した 8 件のヒアリングに基づく。市場価格は変動するため、実際の事業判断は最新の市場データに基づくこと。